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恋愛のススメ。

第一章 憧れ



出版記念パーティーの出席名簿を見て、私は心をときめかせた。


なぜか会う機会がなくて、でもずっと憧れていた作家、森尾健三郎さんが来ている。


めったに大きなパーティーに出席しない私。


でも今回の主役がデビュー以来ずっと仲よくして頂いていた作家さんだっただけに、


顔をださないわけにはいかなかったのだ。


「真中さん、こっちこっち」


声の主は、いつもお世話になっているB社の担当者さん。


「あ、どうも」


「いくら派手なパーティーがお嫌いでも、今日は絶対にこられると思っていましたよ」


「別に嫌いってことはないんですが・・・」


私は口ごもった。


こういったパーティーでたくさんの作家にうもれていると、


まるで自分が書店の本棚に並んでいる気がして苦しくなる。


声も出せず、ただ、お客さんに買ってもらうのを待つ自分。


友人や師匠、苦手な作家達が売れていくなか、売れ残る自分・・・。


想像しただけで怖くて不安でたまらなくなる。


「そうそう、例の作品、うちで出版できることになりました」


思いがけない言葉に、


「えっ、ほんとうですか? ありがとうございます!」


私は何度も頭を下げる。


「T社さん、こちら真中さん」


B社の担当者が、隣にいたT社に紹介してくれる。


「ああ、あなたが。よければうちにも原稿、送ってください」


私は差し出された名刺を受け取り、急いで自分の名刺を差し出した。


「ありがとうございます」


こういったパーティーは、自分を売り込むのに最適で、


華々しいデビューを飾った作家以外は、こうやって地道に名前を覚えてもらう。


「もっと真中も自分を売り込まなきゃ」


友人に何度そういわれたかわからない。


一通りの名刺交換をすませ、会場を見渡す。


どの人が、森尾健三郎さんなのだろう。


私は残り少なくなった自分の名刺をにぎりしめ、あたりをうかがった。



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